石油は現代文明の麻薬か?

James H. Hatfield (1958-2001)


渋谷の『UPLINK FACTORY』において9/25から10/15まで『解禁・ブッシュ伝 噂の真相』という映画が公開される。(UPLINK FACTORY)

アメリカ大統領の実態を暴く映像はマイケル・ムーアの『華氏911』だけではない!
ホントかウソか、伝記作家と若きパンク出版人が暴く大統領をめぐる真相とその顛末!

わたしはこの映画を見ていないが、多分以下の内容はネタばれになると思うのでご覧になる方は注意して読んでいただきたい。

経緯は、J.H.ハットフィールドという作家(写真)の書いたJ・W・ブッシュ(49th)の伝記『幸運なる息子』(邦題『幸福なる二世 ジョージ・ブッシュの真実』(ISBN:4899980167)青山出版社)が回収されたという騒ぎに端を発している。同書にはブッシュが1972年にコカイン所有の罪で逮捕されたと記載されていた。ブッシュにとってもスキャンダルだったが、同時に著者のJ.H.ハットフィールドのスキャンダルも暴かれた。しかし著者のスキャンダルと描かれた事柄はまた別の話だ。同書は再度出版に漕ぎ着ける。
どうも、この映画はこの辺りの事情を描いているらしい。
しかし、そんな中、J.H.ハットフィールド自身が「薬物の過剰摂取」(いわゆるOD)で「自殺(または、事故死、はたまた?)」を遂げる。(aml 24756)

ODでおっチぬようなパンク野郎が、共和党大統領候補を揶揄しようとしたガセなのか、それとも「ブッシュ一族の陰謀」か(BUSH CRIME FAMILYブッシュ犯罪家族・総覧(1))



ちょっと考えてみると、この「噂」に真実味があるのは、ブッシュファミリーの携わっている業界に原因があるように思えてならない。

どういうことか。今のこの社会は石油のエネルギーに依存している。この現代文明を「ハイ」にしているのは石油という「薬物」なのかもしれない。薬物中毒患者が薬物の無い生活が考えられないように、現代社会もまた石油の無い生活など考えも及ばない。
更に言うと、薬物も付加価値によって膨大な利益が得られるのと同様に、石油もまたその所有者に膨大な利益をもたらす。薬物の場合は、取締りによって希少価値が上がり、希少価値が利益をもたらすという経済学に忠実なお話であり、石油は薄くとも広く広く利益を回収するという戦略的な結果なのかもしれない。どちらもほとんどただ同然の一次産品から膨大な利益を集約する流通形態を持っている。
薬物流通において様々な「問題」が発生するように、石油流通においても様々な「問題」が発生する。とは言っても、石油取り扱い業者が薬物取り扱い業者のように違法行為をするだとか、ショバ争いでカチコミが起きるとかといった類の話ではない。もっと大規模でもっととんでもない話だ。石油が元で起きるとんでもない「問題」というのは、他ならぬ日本にも降りかかってきている。落ち着いて考えてみて欲しい、先の大戦で日本は米国から「最終通牒」を突きつけられ、例の真珠湾攻撃に至ったわけだが、この時日本は何を求めて対米戦に踏み切ったのだろうか。「石油」だろ。
更にまた、戦争の火種が尽きない中東の混迷の原因もこの「石油」なのではないか。
米国という国はでかいショバを押さえたバイニンみたいなものなのかもしれない。そして、この日本という国は完全にジャンキーとなってせいぜいできることが「石油(薬物)」の備蓄ということなのだろうか。

…だからといって、この「石油」という資源を国際管理にまわせだとか眠たい事を言いたいわけではない。そんなのは結局ケツモチの代紋が替わるだけで実体は何も変わりはしない。また、「脱石油社会」なんて夢想もしない。それは「石油」という薬物がなにか別の薬物に替わるだけなのかもしれない。そしてそれは薬物乱用者が良く陥るエスカレーションに似てはいないだろうか。
「もう、一回食っちまっている」ものならば、どうやってそれと付き合うか考える以外に道は無いように思える*1
薬物においてもガチガチに取り締まるだけの米国方式が良いのか、ある程度の容認をして、その本来の問題である「脱社会化」を食い止めるアムステルダム方式が良いのかは判らない。また、この薬物におけるアムステルダム方式なるものを、相手を石油に据えてどのように組み立てうるものか、わたしにはさっぱり見通しも付かない。

ただなんとなく、アフガニスタンという国と、イラクという国。更にブッシュという大統領。そしてイスラエルパレスチナの問題。これらを俯瞰して見たときに、100年後の歴史学者にわたしたちは何を弁明できるのだろうか。


*1:上は「弱い人間」の言葉であって、「強い人間」は薬なんかからはスッパリ離脱すべきだろう。しかし現代社会なんて漠然とした括りで考えたら、その集団が「強い人間」の行動原理に晒されて耐えられるだろうとは思えない