転載「最後のストラグルを訴える」

雑誌「噂の真相」がラス前を迎えている。(YAWARAちゃんネタではまたぞろ訴訟を抱えそうな気もするけど、そうしたら休刊撤回にならないものか?)この雑誌の多くの読者*1はわたし同様一番後ろのほうの「読者*2の場」という読者*3投稿欄から読み始めるらしいが、今月号もラス前にふさわしい面白い投稿があったのでここに転載する。谺声よ響き渡れ。
「最後のストラグルを訴える」

 全国の労働者市民学生の皆さん!
 こちらは三十五年目の時計台放送*4です。我々は山本義隆*5同志の「磁力と重力の発見」*6三賞受賞*7を支持すると共に、噂の真相への惜別の意味をこめ、この放送を再開する。
 我々は葦のようにではなく、震えながら死んだのであったが、今こそこの国に一つの妖怪として跋扈すべきであると考える。イデアという妖怪としてだ。
 闘った皆さん!我々は現実に押しつぶされ追認主義を自らに許してきたことを自己批判せねばならない。内部ゲバルトが運動の瓦解をもたらし、よって多くは沈黙の選択も無理ないことかもしれない。しかし提起した「自己否定」を逆説として体現していること自体を、痛苦とともに圧倒的に乗り越えねばならないであろう。若年が陸続と渡るべき体制批判の脈幹を断ち切ったことを真摯に省み、今なお国民国家、資本に奉仕するだけの自らを否定せよ。
 戦乱は世界を覆い、国家主義者たちは内閉したナショナリズムをあからさまに喧伝している。天皇というローカルな遺制、国家と資本に人民を拝跪させるべく憲法改悪の策動も進みつつある。対抗する言説は、消費の欲望の前になし崩しに馴致され思考を放棄する大衆には届かず、疲弊している。環境問題も宇宙開発が無理無謀の域を出ないことが明白な今、喫緊である。
 この期に及んで高らかにインターを謳い、革命はかつてあり今あり今後もある、人間の解放は資本からの開放、人類の理想は国家の廃絶、ヒュポダイムの転換*8を断固として訴え、反動勢力の顔色をなからしめねばならない。ご都合主義にも日帝本国は全共闘世代を使い捨て、放逐する年月ともなっている。
 日々悪戦を闘う同志諸君!これ幸い愚かにももう一度、あらゆる場所から君の「時計台放送」を再開すべきなのだ。*9人生の余日に何をためらうことがあるというのか。
 連帯を求めて孤立を恐れず力及ばずして倒れることを辞さないが力尽くさずして挫けることを拒否する。我々に代わって闘う同志の諸君が、この放送を再開する日まで、一時、放送を中断します。



これは「引用」ではない!

*1:わたしでなく

*2:わたしの場ではない

*3:くどいですね

*4:東大全共闘が占拠した安田講堂から行った放送、
最後の時計台放送は昭和44年1月19日

*5:昭和16年大阪生まれ。東京大学大学院物理学専攻博士課程中退。
東大大学院生時、同学全共闘代表となり、44年1月の安田講堂功防戦で東大闘争を指揮。“攻撃的知性の復権”による東大解体を唱え、全国の注目を集めた。
同年9月結成の全国全共闘の議長にも選ばれた。安田講堂解除後、兇器準備集合の疑いで逮捕状が出され、8ケ月間の逃亡の末逮捕。48年7月懲役2年執行猶予3年(求刑3年6月)の刑を受けた。
その後は、政治活動から一切手を引き、現在は駿台予備学校物理学講師。あの山形浩生駿台で山本に物理を習ったらしい

*6:ISBN:4622080311

*7:第30回大佛次郎賞朝日新聞社主催)、第57回毎日出版文化賞、第1回パピルス

*8:諸知識は相互に成り立っている、相互に見た場合不協和があっても明識しないまま秩序を持たせるという基幹的発想の枠組みを「ヒュポダイム」と呼ぶとすると、それを批判し諸知識に一貫した秩序を持たせることが哲学に要請されている:廣松渉など<といったところで勘弁しといてやれ>

*9:時計台放送最後の言葉
「われわれの闘いは勝利だった。全国の学生・市民・労働者の皆さん、われわれの闘いは決して終わったのではなく われわれにかわって闘う同志の諸君が、再び解放講堂から時計台放送を真に再開する日まで、一時、この放送を中止します」