非対称の社会

今日は世界貿易センタービルが崩れ落ちた米同時多発テロから5年目に当たる。
米国ブッシュ政権はこの事件をアルカイダの犯行と断定し、アフガニスタンに攻め入った。そしてアフガニスタンの混乱も収束せぬうちにイラク-フセイン政権がこのアルカイダと繋がりがあるという「憶測」の下、そのイラクが「大量破壊兵器」を準備しているとイラクにも攻め入った。
イラク-フセイン政権が準備していたとされる「大量破壊兵器」は存在しない事が明白になってきたし、アルカイダとの繋がりも否定された。

つまり、デマと憶測によって、アフガニスタンやらイラクでは多数の人々が死傷した事になる。にもかかわらずブッシュ政権はこれらの侵攻に掲げた「テロとの戦い」の大義を未だに翻そうとしていない。そして、米国内ではそこそこの支持を受け続けている。

アフガニスタンイラクの国民の生命や安全よりも、米国国民にとっては自らの安全の方がより重要であり、ブッシュ政権の掲げる「テロとの戦い」はその安全をもたらす活動に思えるのだろう。

しかし、俯瞰で見ればこのような米国政府の一方的な行動が、彼の中東諸国の反発を引き起こし、その反米感情の高まりの中から新たなテロが生み出されているという構図が見える。
つまり、ブッシュ政権の「テロとの戦い」は、その実「テロの生成」でしかないのではないだろうか。

そもそもサウジアラビアをはじめアルカイダに同調する人々がなぜ広く存在するのか。それを突き詰めていけば、米国の中東政策の問題点も明確になってゆき、彼等テロリストと呼ばれる者たちの活動目的が喪失し、それこそがテロを根絶させる事になるに違いないが。そのようなアプローチは取れないらしい。


また、この間。特筆すべき事として我らが日本の小泉総理は、イラク大量破壊兵器が存在する明確で具体的な根拠があると強弁し、米国のイラク侵攻に賛成を表明し、更に自衛隊イラク派兵まで踏み切った訳だが。その明確で具体的な根拠とやらは「ガセ」だったようだ。「ガセ」というと思い出されるのが民主党永田寿康議員の「ガセメール問題」だろう。

この「ガセメール問題」で永田は自民党武部勤の名誉(正確にはその二男坊の名誉)を毀損したとして謝罪し、更にこのような「ガセ」を掴まされたということなどで信頼を失って、やがて議席からすべり落ちる事となった。

しかし、ここでまたまた俯瞰してみると。
ガセ情報を掴まされて一国の国運を左右する参戦という大英断を下した総理と、ガセ情報で公人(正確にはその息子の私人)の名誉を汚す事と、<政治家>としての資質に問題があるのはどちらなんだろうか。


テロの「危険性」から守られる米国民と、憶測だけでミサイルを叩き込まれるイラク国民。
ガセ情報で戦争にのこのこ参加しても誤りを認めない総理と、議員辞職に追い込まれる議員。

ここには、非対称性がある。ダブルスタンダードに晒されている。
ケアされるものとケアされないものの線引きがあり、その間を「橋のない川」が流れているように思えてならない。


先ほど秋篠宮家に男子が生まれた。
この事について語りたい事が二つある。

ある女性が居る。彼女は仕事もバリバリこなす女性なのだが、休みともなれば一日中テレビをつけるテレビっ子でもある。常に、あの喧騒がなければ落ち着かないらしい。勿論、仕事から家に辿り着くと部屋の電気と同時にテレビのスイッチをいれる。
その彼女がここ数日テレビを見ない。正確にいうと地上波を見ない。
彼女は子供が産めない女性なのだ。

どんな家であれ、なんであれ、子供が生まれることはそれはめでたい事なんだろう。それは十分理解できる。しかし、「祝う事」と「それを言明する事」とは異なる行動に違いない。

様々なサイトでも「奉祝」のような言明があるが、彼等はいったい何を言明したいのだろうか?

雅子后の成婚とやらの時には、それまで否定的に捉えられていた「身上調査」とやらがもてはやされ、さらにここ数日は「男の子を産む母親」を見せられる彼女の心情を推し量ると、わたしの胸には重く暗いものがのしかかる。


ここにも、非対称性がある。ダブルスタンダードに晒されている。
ケアされるものとケアされないものの線引きがあり、その間を「橋のない川」が流れているように思えてならない。


秋篠宮家の男子について、語りたい事のもう一つと、この「非対称」の来し方行く末は、次の機会に譲りたい。