スウェーデンは犯罪大国か?

相変わらず、林道義の文章を読んでいるのですが。「六 離婚と犯罪の比例関係──スウェーデンの国家的破綻を直視せよ」という項目に。

犯罪数が人口当たりアメリカの四倍、日本の七倍。強姦が日本の二〇倍以上、強盗が一〇〇倍である(武田龍夫福祉国家の闘い』中公新書、二〇〇一年、一三四ページ)。なんとスウェーデンという国は世界に冠たる犯罪王国なのだ。

という記述があり、どうも実感とかけ離れているので色々と調べてみた。

犯罪率統計-国連調査(2000年)

国名 警察人員
(%)
警察予算
(%)
犯罪率
(%)
殺人
(件/10万人)
強姦
(件/10万人)
強盗
(件/10万人)
麻薬
(件/10万人)
収賄
(件/10万人)
日本 0.18% 0.22% 1.92% 0.50件 1.78件 4.07件 22.24件 0.08件
スウェーデン 0.18% 0.13% ... ... ... ... ... ...
オーストラリア 0.21% 0.02% ... 1.57件 81.41件 121.43件 ... ...
カナダ 0.18% 0.02%* 8.04% 1.59件 78.08件 87.70件 285.54件 ...
アメリカ合衆国 ... ... ... ... ... ... ... ...

犯罪率統計-ICPO調査

国名 年次 人口 犯罪率 最も多い犯罪 件数(件/10万人)
日本 02 127,435,000 2.3% 窃盗 1871.13件
スウェーデン 01 8,909,128 13.35% 窃盗 1323.90件
オーストラリア 00 19,153,840 7.48% 窃盗 6653.18件
カナダ 01 31,081,887 8.57% 窃盗 2758.26件
アメリカ合衆国 01 284,796,887 4.16% 窃盗 3804.58件


(オーストラリア、カナダ、合衆国を抜き出したのはポピュラーで治安の実感が掴みやすいのではと思ったから。主観的な判断ですけどね)

資料1-3  日本と世界各国の1995〜2000年の罪種別の犯罪発生率


「殺人の被害発生認知数と人口10万人中の被害発生認知率」

1995年 1996年 1997年

認知数 認知率 認知数 認知率 認知数 認知率
スウェーデン 251 2.84 278 3.14 228 2.57
日本 1130 0.9 1046 0.83 1137 0.9




「強姦の被害発生認知数と人口10万人中の被害発生認知率」

1995年 1996年 1997年

認知数 認知率 認知数 認知率 認知数 認知率
スウェーデン 1363 15.43 1255 14.19 1302 14.71
日本 1500 1.20 1483 1.18 1657 1.31



「強盗の被害発生認知数と人口10万人中の被害発生認知率」

1995年 1996年 1997年

認知数 認知率 認知数 認知率 認知数 認知率
スウェーデン 5747 65.08 5821 65.83 6641 75.04
日本 2277 1.82 2463 1.96 2809 2.23


    • 色々な意見

犯罪に関する基本意見 2(犯罪対策について)[2005年01月06日(木)](rnalength ちょっとした異論)

「3.人権、人権というから世の中に異常者が増えるのだ」について(略)

ある人は「北欧は犯罪率が高い(スウェーデン13.6%など)」ことを挙げています。その根拠となる表を見ると、ペルーは驚くべき事に0.61%、ブラジルは0.93%、コロンビア0.41%です。で、日本は2.3%、香港は1.0%、フランス6.7%です。ここでいう「犯罪発生率」が、治安度を反映していないように見えます。また、もしここで人権保護が犯罪発生率に相関すると仮定すれば、人権保護をしている大きさが「スウェーデン>>フランス>>日本>香港>ブラジル>ペルー>コロンビア」となります。なんか変です。ちなみに、別の資料で、殺人発生率は「コロンビア>>>ブラジル>>韓国・スウェーデン・フランス>>日本」だそうです。犯罪が発生しないところでは殺人発生率が高い?どういうことなんでしょう。
 これでは、人権保護と犯罪発生の関連を言うには「ばらつき」が大きすぎ有意とは言えません。確かなことは言えませんが、これはおそらく別の要因が関与していると考えるべきと思います。

                                                                                                                                                              • -

上記資料について見直したところ
「犯罪率=刑法犯罪認知件数÷総人口」とありました。
「認知件数」とは、警察が把握できている犯罪数のことで、実際の犯罪数ではありません。
おそらくその辺が強く影響しているのではないでしょうか。
なお、この統計の引用下はICPO国際刑事警察機構)だそうです。

スウェーデンは福祉国家だが、しかし・・・・・

スウェーデンの犯罪

 アンナ・リンド外相の殺人事件で、The Observerはスウェーデンの犯罪件数は比較的多いと載せた。2年前に出た日本のある新書においても、スウェーデンの犯罪は多いと載っている。両者の根本的問題は、インターポールの数字は比較資料としては使えないということを理解していないことである(なお日本の新書は原典を明記していないが、インターポールの数字がもととなっていると思われる)。私は犯罪学の専門家ではないが、犯罪統計における一番の問題は統計の比較性の問題である。具体的には国によって何を犯罪に含むかが異なり、また統計の取り方が異なる。たとえば強盗殺人を強盗と殺人2件として扱うか、殺人として扱うかが国によって異なる。同様にして何時の時点で統計に含むかも異なり、未遂事件の取り扱いや、最終的に事故として結論付けられたが殺人事件として警察に訴えが為された事件の取り扱いも異なる。このようにして、インターポールの統計では2001年度のスウェーデンの殺人は892人となっているが、実際は167人で、5.5倍になる。犯罪率についてもこのような誤解があるものと思われる。(2003年9月28日記)


なんとなく、実態はそれほど悪くないのではないかって気がする。
少なくとも、何かを導き出せるほど確かな差異は無いのではないかな?

「高福祉社会が家庭の崩壊をもたらし、家庭の崩壊が犯罪発生率を上げる」っていうのは、印象論の枠をでないようだ。

話の出元である。
武田龍夫「福祉国家の闘い」の紹介というか抜粋

Google で「スウェーデン 犯罪率」で検索。これ、検索結果 約 22,900 件

例えば一例。

日本精神と教育の再建を大野城市から!(と、訴える)大野城市議会議員:いかるが卓徳

(ここにも居るか、るいネット


    • ここから「印象操作」っぽい。

北欧文化協会
1659.山岡コラム
「件名:皇太子殿下のご発言を考える」(北欧文化協会理事長 武田龍夫 世界日報

弁護士紀藤正樹のLINC
世界日報を宣伝する知識人Up00/07/01」
(渡部昇一も居るな(笑)。ここに名前を連ねているからって「工作員」だなんて即断はしません、単なる「印象操作」です)