独立行政放尽警察

内容とは全然関係ないけどな


「性犯罪の前歴者の情報を住民にも公開すべき」つまり、日本版ミーガン(メーガン)法を勧めるべきと国家公安委員が言ったってんで誰が言ったのか気になっていた(このエントリー
産経の報道では複数の委員から意見表明があったとなっているが公式の議事録では大森委員の発言が載っている。(ご尊顔&プロフィール

ついでにアレコレ見ていたんだけど、気になった話題を一つ。「平成17年1月27日議事録」の議題事項の(5)*1

アレだけ大騒ぎして施行された盗聴法の実施状況と、それへの国家公安委員の気になる発言がありました。
ついでなので実施状況をまとめておきましょう。


データソース:
「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律第29条に基づく平成12年における通信傍受に関する公表」(法務省:平成13年2月16日)
「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律第29条に基づく平成13年における通信傍受に関する公表」(法務省:平成14年2月8日)
「平成16年中の通信傍受の実施状況等に関する公表」(法務省:平成17年2月4日)
平成14年、平成15年分別表二(PDF)
平成16年分別表一(PDF)

犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(条文:法務省)

盗聴法実施状況

11年 12年 13年 14年 15年 16年
請求 - 0 0 2 4 4
実施 - 0 0 2 4 5
逮捕者 - 0 0 1 4 12

結局大騒ぎで法律を作って、良い子の盗聴セットを買って貰ったアリバイに使っているって感が漲っている気がするんですけどね。

そして気になった発言と言うのはこちら。

安崎委員より、「振り込め詐欺のような事案の捜査について、通信傍受法が適用できれば効果があると思うが、現行法上適用することにどのような課題があるのか。薬物犯罪の捜査に限定された現在の運用は警察の自制として評価できるが、法律で認められている、他の限定された悪質犯罪にもこの規定を忠実に守りながら適用することはできないのか。こうしたことは素人考えに過ぎるのか。」

荻野委員より、「通信傍受法の適用罪名を見ると、すべて麻薬特例法違反であるが、これ以外のものには適用できないのか。安崎委員からも指摘があったように、素人から見れば、振り込め詐欺などにこれを適用できればもっと成果が上がるのではないかと思う。(中略)通信傍受法の改正について、いかなるタイミングで、どのように切り出すかということも今後の一つ大きな問題であると思う(略)」

まずさ、素人考えにもほどがありはしないかと。薬物捜査に関しては、対象がはっきりしているんだろう。対象、つまり「売人」がはっきりしているけれどもその背後の流通経路を一網打尽にする、その為にはその「売人」の通信を盗聴しなければならないってのが本来の趣旨だっただろう(実施効果が上がっているとは思わないけど)。翻って振り込め詐欺の場合は対象がはっきりしていない、つまり不特定多数に何処とも知れないバカ詐欺師から突然に「オレオレ」と電話がかかってくるのが「振り込め詐欺」なんだろう。どこの誰が「オレオレ」と言っているか、はっきりしているぐらいなら即座に絞められるじゃない。いったい何処の誰をどういうふうに「盗聴」しようっての?

確かに振り込め詐欺は卑劣な犯罪ではあると思う。しかしこの犯罪を防止するのは結局、電話という空気や水のように当たり前になってしまった「通信」における相手方認証の方法論、広くいえば社会人として義務教育レベルで身に付けるべき情報リテラシーの問題ではないだろうか。逆にこの犯罪によって面倒は面倒だろうが情報と言うものへの自己防衛の意識が芽生えているともいえる。これは「酷いインターネット」としての2chがインターネット上に迂闊に個人情報を晒さないという教育効果を持った事と通ずるだろう。

国家は国民の親ではない。逆に、国民が本来自らケアすべき事柄まで国家に依存すると、国家は肥大化し、高コストな国家と脆弱な国民が生まれるだろう。

警察は強く独立性が求められる。警察であるとか検察は行政機構の一部ではあるが時の与党である官邸からも独立が求められる。しかし警察機構の独善を防止する為に一定の有識者、見識を持った者を「国家公安委員」として「迎え」その審査を行うことになっている。けれども、このようなメンバーの選定、メンバーに渡される情報はその審査される機構に牛耳られており、健全なチェック機能が果たされているといえない。警察であれば不正経理問題で国家公安委員会の無力は明白であろうと思われる。

行政機構からも独立し、独自に暴走すれば。「独立行政放尽警察」が生まれてしまう。(というか、すでにそうなっているように思えるよ)


*1:…というか、ワードで作って…、アンカーぐらい置けっての