境を作る人

日本全国で地方自治体の合併が盛んだ。
この合併の流れ自体が良いとも思わないが、各地で悲喜こもごもの騒動があるのだろう。
特に岐阜県と長野県で起きている「越県合併問題」というのは、長野県のスター田中康夫知事の存在もあって注目されている事だろう。
例えばこのページを見ていただこう。
http://www.nagano-np.co.jp/minikikaku/yamaguti.html
意識調査表
当の山口村民の意識調査が掲載されている。
合併に賛成がほぼ6割という値に達している。無効を見てみるとわずかに10人、0.64%という数字にこの問題に対する住民の注目度が窺える。

山口村といえば所謂木曽路、国道19沿いの山深い場所にある。わたしにとっては、スキーであるとか蕎麦を食べに出かけるときに通過する程度でさしてなじみはない。であるのでまったくのマスコミ情報をベースにした感想しか持たないのだが。
実利的、実際的な合併賛成派に対する、
心情的な合併反対派という感想を持っている。
住民の6割が合併に賛成であるという理由は、山口村の住民にとって既に長野県とのつながりよりも岐阜県、それも中津川市とのつながりの方がより深いからであるそうだ。
山口村の住民は急患が出れば中津川の病院に搬送されるそうだし、高校ともなれば越県通学の生徒も多いと聞く。更にゴミの収集その他にしても中津川市との連携が深いらしい。

何よりも地元住民の意向を最優先に考えれば良いと思うのだけれど。

さて、そんな中でこれだ。
信州の歴史と文化を大切にしたいと願う表現者の会

http://www.ne.jp/asahi/eiji/home/main/20041219b.jpg

まあ、わたしにとってはなんということ無い文章なんだけど。
「勝谷誠彦の××な日々」の「2004/12/19 (日) 高松宮喜久子さまに心から哀悼の誠を捧げたてまつる」にこうある。

読者の中には長野県在住の方がかなりおられると思うが今朝の信濃毎日新聞の経済面をぜひ見ていただきたい。全5段を使った意見広告がお目にとまると思う。(略)コピーは不肖私が書かせていただいた

彼の言うとおり「井出孫六さん内田康夫さん藤田宣永さんをはじめとする長野在住の作家の方々の名前が並び」それなりのヒトもいるだろうに、まったくおっちょこちょいのでしゃばりだなぁ。
で、こうなる。
加瀬清志ドットコム「2004.12.20 心を打つ文章が書けない表現者ってだれ?」

とても信州の歴史と文化を大切にしたいと心底思っている表現者の書いた文章ではないと思ったからである。
「失いたくない。信州人の宝、藤村の山口村を。」とその文章には見出しが付けられている。
山口村が信州の宝なのは、島崎藤村を生んだ地だからなのか?
その山口村に今までこの表現者さんたちは何をしてきたのか?
どうせアピールするなら、もっと読む者の心を打つ文章を書いて欲しかったなあ。
藤村を持ち出したことで、この文章は多くの共感を得られないと思った。名うての表現者の名前が散見するのに、どうしてこんな情けない文章になっちゃったんだろう。
きっと、ひとりの、それもいちばんレベルの低い書き手にまかせきっちゃったんだろうね。残念。

もう一度勝谷のエントリーからひこう。

長野県の南の端にある山口村というところが全国で初めての越県合併岐阜県に行ってしまおうとしていることに対して全県的にもう一度考え直そうではないかという呼びかけなのである。(略)もちろんそれぞれのコミュニティの方々の意志は尊重すべきだがでは県なるまとまりと県人の意志というものはどこにあるのかという議論でもある。

そもそも「長野県」なるものの成り立ちからして長野と松本の間に穏やかならぬものがあることを勝谷は知らないのだろうか。まるで深みのない男だな。

今回の問題。山口村を長野県に引きとめようという心。それは要りもしない「境」を作ろうという心に他ならない。田中康夫ほどの男がこの「境」になぜこだわるのかは判らない。彼の頭に一瞬でもレノンの詩が横切らないものかな。
♪Imagine there's no countries
         it isn't hard to do



教えてもらった。
「文豪の里 分村合併始末 中津川市神坂越県合併小史」

つらつらっとしか見ていないけど、根深いものがあるな。



話題はかわって。
これもパクったネタだけど。
拉致問題に関して」コリン・コバヤシ@グローバル・ウォッチ
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42280.html

あまり aml のネタには絡みたくないんだけど。
この文章は良いね。特に付け足すところはないよ。
わたしも以前こんな事を書いたけれど。
「地に足をつけよう」
http://d.hatena.ne.jp/dokusha/20040817#p3

右でも左でも良いや。その事の優位性をお互いに言う事も一時おいておいて。いったいどうあれば一番良いかを考えてみたい。