地獄への道は善意で敷き詰められている

330人以上の犠牲者を出したチェチェン武装勢力の学校占拠事件は記憶に新しい悲惨な事件だったが。
次のような情報に触れるとより深刻さに打たれる。
イングーシ共和国前大統領・ルスラン・アウシェフへのインタビュー ノーヴァヤ・ガゼータ紙第65号2004.09.06(チェチェンニュース Vol.04 No.31 2004.09.14 )

グツェリーエフ(現地本部の要員?)が彼らと(テロリストたちと)話しあった。車に医師を乗せて5人で行くことに合意したんだ。その時に、向こうの建物の中で爆発音がした。女性が飛び出してきて、誰かが、何かに引っかかったと叫んだ。紐だか、電線だか、そんなものに戦闘員の一人が引っかかって、爆発が起こったんだ。われわれの方も何が起こっているのか、確かめようとした。そしたら、射撃が始まった。次々といろんなことがね。

NV(ノーヴァヤ・ガゼータ):射撃というのは校内からですか?

 いや、校内で起こったのは爆発だ。そして子どもたちが飛びだしてきた。それより前に私が校内に入って、見たときには、体育館内は女性と子どもがすし詰め状態だった。爆発が起こって、人々が出口に殺到して、その後は大混乱だ。

 われわれは射撃を止めさせようと思った。で、電話をした。彼らはこう言った。「こっちは撃つのをやめた。撃っているのは、そっちだ」と。こちらも「一切撃つな、射撃止めろ」と命令を出した。ところが、馬鹿なことに軍でも犯行グループでもない、「第3勢力」がいたのだ。そんな連中が、一体なぜあそこにいたのか、それは今、調べているところだが、自動小銃などを手にした「自警団」の様な連中が、自分たちで人質を解放しようとした。そして彼らが学校に向かって撃ったのだ。ということで、公式な部隊は撃たなかったし、占拠者も撃たなかった。

 われわれは互いに怒鳴りあっていた。「誰が撃っているんだ?」学校の中にいる連中は「もうダメだ、ならば自爆だ」で、自爆した。彼らは突入と解釈したのだ。自爆があって初めて、こちら側でも突入命令が出た。

こちらも参照:ロシア学校占拠事件とプーチンの独裁 2004年9月28日  田中 宇

「自警団」の様な連中。彼らは「善意」で銃を構え、学校に立てこもる「テロリスト」を撃とうとしたのだろう。彼らは「正義」を為そうとしたのだろう。「地獄への道は善意で敷き詰められている」
そしてその善意は情報が乏しい、視野が狭い。