一つの側面的事実

相変わらず「国が燃える」の話題が凄い事になってますね。
id:claw:20041002
ここのコメント欄で

世界の学術的趨勢から言えば、南京大虐殺はなかったというほうが依然超少数派であることは自覚しろよと思う。

というコメントに

# ( ´,_ゝ`)σ 『>世界の学術的趨勢から言えば、南京大虐殺はなかったというほうが依然超少数派であることは自覚しろよと思う
マジで言ってんの?正気?』

という反論がなされている。まったく、壷臭い。
ただ確かに「世界の学術的趨勢」なんて根拠を持ってくると、またぞろ「自虐史観」だの「親中土下座学者連中の権威主義的な独断」みたいな反論があるんだろう。(表現は緩やかかもしれないけど)
こんな傍証が決定的とも思わないけれども、ちょっと面白い例を示してみよう。この例では「南京虐殺」を当時の文部省も認め、さらに最高裁判所も認めたって例だ。
日本においては行政と司法の「権威」が「あった」と言っているわけだ。
平成六年(オ)第一一一九号平成九年八月二九日第三小法廷判決

一一 同第四章第一節第三(昭和五五年度検定の「南京大虐殺」に関する修正意見)について
1 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
(一) 昭和五五年度の新規検定申請において、本件教科書の「中国との全面戦争」の原稿記述の脚注の「南京占領直後、日本軍は多数の中国軍民を殺害した。南京大虐殺(大虐殺にアトロシティーとルビがふられている。)とよばれる。」との記述に対して、文部大臣は、このままでは、占領直後に、軍が組織的に虐殺したというように読み取れるとの理由で、このように解釈されないように表現を改める必要がある旨の修正意見を付した。
(二) 甲教科書調査官は、理由告知において、南京事件についての研究の現状からみて、原稿記述は、「南京占領直後」という発生時期の点、「軍の命令により日本軍が組織的に行った」という殺害行為の態様の点及び「多数」という数の点において、いずれもこのように断定することができないので、記述を修正すべきであると右修正意見の理由を説明した上、右理由告知の過程において「軍が組織的に行った」と読み取られることを避けるため、「多数の中国軍民が混乱に巻き込まれて殺害された」あるいは「混乱の中で日本軍によって多数の中国軍民が殺害されたといわれる」というように書き改めるよう示唆し、申請者側がこれに応じなかったところ、内閲調整の段階で「混乱の中で」を書き加えるように求めた。
(三) そのため、上告人は、修正意見に従い、「日本軍は、中国軍のはげしい抗戦を撃破しつつ激昂裏に南京を占領し、多数の中国軍民を殺害した。南京大虐殺(大虐殺にアトロシティーとルビがふられている。)とよばれる。」と記述を改めた。
2 所論は、「南京占領直後」という発生時期の点について修正意見を付したことは違法だというものであるが、なるほど、甲調査官の理由告知では、三点に分けて説明されているものの、最終記述及びそれに至る経緯に照らせば、修正意見の趣旨は、多数の中国軍民の殺害が、軍の命令によって組織的に行われたと読み取られることを避けるべきであるということにあったことは明らかであり、原審は、「激昂裏に」を付け加えさせる結果となった修正意見をもって違法であると判断しているのである。
3 そうすると、甲調査官の理由告知の際の発言中に発生時期の点に関するものがあったとしても、これをもって原審が違法と判断した修正意見とは別の修正意見が付されたということはできないのであり、発生時期の点については違法ではないとした原審の判断は、結論において是認することができるものである。論旨は、原判決の結論に影響しない説示部分をとらえて原判決を論難するものであって、採用することができない。

全部読んだ方はご苦労さん。所謂「家永教科書検定第三次訴訟」における最高裁判決の一部であって。裁判の論点は「原判決」とされている高裁判決がないとなかなか把握できないだろうけど、
結局のところ家永三郎が自著の教科書(はいはい、自虐教科書でしょうね)において「南京大虐殺」について記述したところ、教科書調査官(文部省)は「南京事件についての研究の現状からみて」
1.発生時期(「南京占領直後」とはいえない)
2.殺害行為の態様(「軍の命令により日本軍が組織的に行った」とはいえない)
3.被害者数(「多数」とはいえない)
という修正意見を出して、それが適法かどうかって争われているってことなんだよね。
つまり科書調査官(文部省)やら最高裁も「南京事件についての研究の現状からみて」虐殺行為があったことについては否定していない、いや、有った事を前提にお話しているわけなんだよ。